■【第三章】アトラクター逆変換の発想にいたるまでの経緯

■なぜ脳は有機性を目立つと捉えるか>脳の共振(共鳴)作用
それでは、脳の中が有機性だらけだということがわかった時点で、外から来る有機性に対してなぜ「目立つ」のかを説明するために話を進める。脳のニューロンクラスターに対して、耳から入力される神経回路がつながっているという単純な例をもとに考えてみる。  
音が目立つということがわかるということは、脳自身が今入ってきた刺激(たとえば音)に対して、明らかに「目立つ」という認識ができたことになる。入った刺激に対して、それを歓迎するかのように、入力部の感度を上げるか、それに類する動作がおきているという自覚があるし、誰にでも起きていることであると考えている。
公知の現象で共鳴(=共振)という現象があるが、脳にもそれに良く似た状態が発生していると考えている。人は感動したり、笑ったり、絶頂間を味わうと共振状態に似た「痙攣」のような動作を行うが、このような反応からフィードバック回路の発散状態を想像することは容易であろう。そしてこの痙攣の周期は神経回路のフィードバックシステムの発信周期とおそらく同じだろうと考えている。

脳は神経回路によってつくられた、双方向ディレイ回路に見立てるという方法で私は解釈してきたが、ここについてもう少し詳しく述べてみる。
ここにニューロンにみたてた単純な遅延回路(パラメータとして減衰率と遅延時間が変更可能な)があったとしよう。(ニューロンにもかならず遅延はあるし、遅延量や伝達量はまちまちであるはずだ)入力から出力の間の出力近辺から音声信号(刺激)を取りだし、遅延回路を介して入力へと加算してみる。
すると入力から一定のパルスがはいるといわゆる「こだま」のように信号は繰り返し出力される。減衰率が大きいと発散するし、小さいとすぐに減衰して音声は消えていくのである。このこだまのスピードは遅延時間によって決まる。たとえば1秒にすれば一秒ごとにこだまするようになるのである。
これは振動工学で言う固有振動数が一ヘルツであることを意味する。減衰率は1/2に設定しておけば、次の音はその半分、その次は1/4と小さくなっていく。1ならずっと永遠にこだまを繰り返すことになる。この回路の入力に今度は一ヘルツのパルスをいれると、最初のパルスはそのまま放出されるが2回目のパルスは最初のパルスの遅延回路経由で戻ってきた信号(1/2分)とミックスされる。すなわち、最初のパルスよりさらに50パーセント大きな音(1.5倍の波高値)となって出力される。この繰り返しによって、つぎつぎとパルスが進むにつれて音は大きくなっていく。もしくは、この回路のダイナミクスの最大値でサーチレートするはずである。
つまり、この状態は回路のダイナミクス(=通常の使用範囲)をこえていることであり、長時間この条件を続けていくと、発振し加熱などの症状が生じて極端にいえば壊れてしまったり、他の刺激をいれても受け付けなくなったりする。この状態が人間の脳でおこると考えられるし、もし起こったならば、さらに近くのニューロンクラスターまで影響を受けて大変なことになるだろう。ちなみに、脳派というものがあるが、これは脳内で行き来している刺激が、電気信号として表面に現れているものであろうから、脳の回路が発振したときは大きな脳派が測定されるであろう。例えば、てんかん発作が起きたときの脳波はこれに近いだろう。将来は、脳派も皮膚電位を測定するのでなく、脳の神経回路ごとに信号の状態がわかるようになれば、もっと細かい診断ができ、情動についても深く解明できるのであると思われる。これらの信号は現在主に行われている周波数解析からカオス解析へと移行し、もっと深いことがわかってくるようになるだろう。

実際に脳の回路ではこのような単純なものではないだろうが、上記の構成を脳にあてはめると、「デジタルディレイのようなフィードバック回路」において、ディレイの部分はニューロンシナプスの情報伝達物質の遅延反応速度として対応させることができる。そして、今回の説明の単純なフィードバックでないにしても、それを入力にもどすという回路が存在する。(ないとしても刺激は末端から反射して弦振動のように戻ってきて、入力に再度影響をおよぼすはずである) 
減衰率も先ほど述べたとおりで細胞の元気さや成長具合に存在するはずだ。このことから、脳にはニューロンクラスターごとに特有の入力刺激に対して応答する固有値をもった、回路があるということがいえるはずだ。すなわち入力の刺激の中に脳に対する振動固有値をもっていると、脳の回路はニューロンクラスターの持っている固有値に関係した値に共振(=共鳴)しやすく、そうなるとニューロンクラスターの出力値は入力の値よりも大きな刺激としてうけとるようになっているといえる。地震が起こったときの地震波が地表を伝わるコンピユーターシミュレーションの映像がニュースに出ることがあるが、その状態と同じように、一度入った刺激が様々なニューロンクラスターの分布状態によって分裂したり、集約したりしてある部分に大きな波高が現れることがあったりするだろう。

すると、このニューロンクラスターには多量の情報伝達物質が行き来するということになる。すると、いわゆる「軸策」に多量の伝達物質が流れ、それは軸策のもつであろう「被覆」で完全にシールドできない量に到達する場合もあるだろう。
このような状態になると、情報伝達物質の量によって、ニューロンの「刺激によって縁をむすぶ機能」が働き、新たな「縁」がさらに作られることになる。これによって、「記憶の軸策」が太くなり、強い記憶が確定されることになるであろう。すなわち脳が(発散までは行かないレベル)で共振するほどの刺激であればあるほど、脳は記憶を促進させるように働く。快感というものゆるやかな快感から絶頂感までいろいろあるが、基本的にはこの脳の共振についてのに対応してもたらされる快感物質の大小のことであると解釈している。

実際の脳のニューロンクラスターははるかに複雑なディレイ&フィードバック回路の集合体であると考えられるため、単純に整数で示される固有値というよりも、固有値自体が関数となるような複雑な値をとると思われる。なので、もう少し上位概念を取り入れて、むしろ、「共振特性、とか共振関数、」と言ったほうが明確な表現かもしれない。単純に数値では表せないが、しかしその概念は確実に存在し、ニューロンクラスターの「共振特性」に近似した「共振特性」を持っている「刺激」に共振しやすいと考えている。これが、「刺激」の中の有機性が、同じ「脳」の有機性と共振しやすいという理由である。この共振特性は後述するターケンスプロットの手法を用いるとある程度視覚的に確認することが可能であろう。

■ターケンスプロットについての私の見方。
ターケンスプロットを行うとなぜ有機性やカオス性が視覚的にみえてくるのかについての文献はまだほとんど見当たらないため、この部分について前述した脳の処理の状態を鑑みて説明を試みる。

人間の記憶は、前述したメカニズムをもちながら、連続した状態で記録が続けられている。ただしビデオレコーダに垂れ流しのように録画しっぱなしではなく、常に入力情報を今まで経験した過去の情報と照らし合わせてどの程度の感度で受け取るか制御されている。 
これによって、一種のメモリ節約作業が行われているということになるだろう。脳の容量が一定であれば、メモリはある程度節約しなければならないと考えるのが自然だ。
そして、この自然な考えは前述した「有限」という概念が生まれたことによって必要となってくる必然的なものである。とすると「有限という概念が有機性を生むきっかけとなる」といえるだろう。
この脳に記録されたフィルムのような記憶内容は、記憶内容の時間軸上で連続しているはずだ。ある瞬間を認知するにはその過去(直前も含む)がどうなっているかを確認しているものと先に述べた。すなわち、ある瞬間を認知するには過去の状態もその瞬間に検索しているということが予測できる。
すなわちターケンスプロット(公知技術)が行っているプロットスケールとよばれる、「ある瞬間でのいくつかの時点でのレベルの調査」は、「今と同時に過去を対応させて表現する」という作業をしているのである。ターケンスプロットはサンプリングされた波形に対して、ある時間からある時間間隔(遅れ時間)をもって、N箇所のポイントのレベルを同時にN次元に展開させてプロットするという作業を行うが、これはまさに、脳が連続して行っている作業にほぼ近いというのが私の見方である。脳もある瞬間の刺激に対して、(何箇所かは不明だが)、過去の記憶の部分を探って、今を認知しようとしているのである。
すなわち、ターケンスプロットの行っている作業は、脳が刺激を受け入れるときの作業を単純化して模しているといえる。ターケンスプロットの処理は、脳が受け取ったときに刺激を記憶へ変えていく処理と、スケールは異なるが同じ方向性であるといってよいであろう。ということは、ターケンスプロット上でみた状態は、良くも悪くも脳で感じる状態に強く関係があると言ってよいであろう。
ターケンスプロット上でもしカオスアトラクタが見えていたとすると、その大枠の形を失わない部分的な波形の変更をしたとすると、これは脳の受け取り方(言い換えると脳の共振を一定レベル維持した状態=目立ち度、印象度と言ってよいだろう)を大きく変えずに波形の変更が可能となってくるのであると私は考えた。これにより、アトラクタ空間内でアトラクタをいじる作業は脳に「目立つ影響を与えやすい状態を保持させたままの編集作業ができる」とシフトさせて考えることが可能だと思った。このため、目たち度を確保しながら、新しい音を次々と制作をすることができる環境が提供できるようになるという効果があると推測している。

厳密にいうと、ターケンスプロットが完全に脳の回路に沿った描画方法とは言い難いが、現時点では簡単なの方法である。私の場合は曲作りそのものが、時系列データを生み出す作業であるため、脳のしくみとターケンスプロットの関連性も瞬時に理解できたところが幸運だったと思う。
また、今後は脳の情報処理をもっと具体化したプロットの方法が出てくるであろう。これが出てくれば、刺激や音に含まれる脳が感じる限定情報のみを抽出することが容易にできるようになるだろう。そうなれば、脳とのインターフェースは急速に発展し、脳派などで他のものを精度よく制御できたりできるだろう。
人を感動させる機能を創出することも可能になってくるだろう。医療や軍需、さらには人間の進化に対しても多大な影響をおよぼすようになるかもしれない。
 余談であるが、多くの場合、カオス性をもつアトラクタは滑らかな形を呈している。これはアトラクタを描く情報そのものに「慣性力もしくは慣性モーメント」の存在を気づかせてくれる。あるいは埋め込み次元間をつなぐ軌道を一つの針金にたとえると、「剛性」という仮想的な機械的性質が浮かび上がってくる。私はこれをアトラクターの「旋回慣性」と呼んでいるが、これが今日の「自然現象の源」を示す重要なパラメータの一つではないかと考えている。

■まとめ(ご注意、あくまで私の見方です。)
脳は有機性を持ったニューロンクラスターから構成され、各々の固有の振動の形(単純な整数とか周期関数ではない特性)をもつということ、その脳に対して入力される刺激の波形が固有の振動の形に近くなると脳は共振し、結果として、大きな刺激として受け取り、快感物質が分泌され、記録されやすくなるということ。
したがって、少なくとも脳は有機性(カオス性をふくむ)を持った入力刺激に対して共振しやすく、この刺激を感度を上げて取り入れるため、「他の情報より目立つ=印象に残るため親しみ易く良い」という解釈をするということに結論づけた。だからこそ、ターケンンスプロットによって作られるアトラクタは脳に響く印象を表現し、この空間で編集する作業は、この印象を継承しながらあらたな波形が作り出せると確信している。

■脳とターケンスプロットの関連性を知ったことででできた発明
上記のような背景から、脳に刺激を印象付けるための波形生成装置を発明した。
それは波形が持つ有機性をさらにアトラクタ空間内で増幅できる装置であって、現在日本国特許庁より公開されている。(特許出願公開2008-275845)この技術の説明は別途詳述したいと思う。また、この技術の応用でさらに多数の特許を出願している。ご興味のある方は特許庁電子図書館で私のフルネームをいれて検索するとすべて閲覧可能であるので、ご参照いただきたい。

この、文章を掲載するにあたり、私の発言が、また未熟な文章が、トンデモ科学とか、空想の強すぎるエッセイと批評されるかもしれない、できるだけ誤解をなくすためにも、必要に応じて編集&加筆したいと思っている。私の考えに、ここまでお付き合いしてくださったあなたに心より感謝いたします。

ありがとうございました。

ps;ただいま9月のイベントに向けて忙殺状態なのでこの文書はしばらく放置すると思います。